ネパールで最高級のハチミツ「ワイルドハニー」
ネパールに世界一危険な場所で採れる「ワイルドハニー」という最高級のハチミツがあるのはご存じでしょうか。ハチミツはネパールのヒンズー文化で5つの「不老不死」の食品のひとつと考えられています。 ネパールでのハチミツの歴史は古く紀元前約11000年前。ヒマラヤの山間部には昔からのやり方で、ハチミツを採る「ハニーハンター」がいます。ハニーハンターは標高の高いヒマラヤの断崖絶壁に作られたハチの巣を命がけで採りに行きます。ハチの巣は直射日光が当たる南西を向く崖にあります。近年の気候変動やミツバチの生息数の減少により「ワイルドハニー」はとても希少で高値となっています。ヒマラヤオオミツバチはヒマラヤ山岳地帯のみに生息するとても珍しいミツバチ。ヒマラヤオオミツバチは受粉に欠かせない大変貴重な存在ですがその数は激減しています。そのことにより、周りの地域全体の生態系が脅かされています。
まず始めにハニーハンターは、ハチミツ狩りの前の儀式を行います。崖の神様の怒りを鎮めるためです。生贄のヒツジや花や果物などを捧げ安全を祈願します。ハンターは、儀式を終えると生木に火をつけ立ち上がる煙でハチを巣の外に出します。その間、ハンターは断崖につるされた縄はしごにつかまり待ちます。ハチミツ狩りを行うカッターが「タンゴ」という先の尖った棒を使い長年培った技術で、むき出しになったハチの巣を突きます。ハンターのすぐ横につるされた籠を断崖に押し付けてハチの巣をキャッチし、ハチの巣が入った籠を地上に下ろします。このハチミツは薬効成分があり世界中から需要があります。
キャラメルのようなコクのある味わいのチウリのハチミツ
ネパールには「ワイルドハニー」と呼ばれるハチミツ以外にも美味しいハチミツがあります。ヒマラヤから熱帯雨林まで広がる標高差のあるネパールのハチミツは多様な自然環境により個性豊かです。ハチミツの中でもチウリの樹から採れるハチミツはコクのあるキャラメルのような味わいです。チウリの樹は寿命が100年ほど。10メートルを超える大木になり白い花が咲きます。チウリは石ばかりの痩せた土地に育ち大地を支えています。枝葉は燃料や建築材料に、チウリの花蜜はハチミツに、果実はフルーツに、種は食用油になります。養蜂は環境を守りながら村の人々の生計を支える森の大事な産業。ハチミツを食べることが環境保全にもつながっています。個性豊かなネパールのハチミツは、ネパールコーヒーや紅茶、ヨーグルト、フルーツなどに合わせると一段と美味しくなります。
記事/Tomoko Watanabe