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ネパールで1000年以上作られてきた自然素材の手漉き紙「ロクタ紙」

ネパールの特産品「ロクタ紙」

日本人にとって、「手漉き和紙」といったら馴染みが深いのではないでしょうか。ネパールにも日本の和紙にとてもよく似た風合いの手漉き紙「ロクタ紙」があります。ロクタ紙は世界最高峰のヒマラヤ山間部で作られるネパールの特産品です。原材料は標高1800~3000メートルの高所に生育する植物「ロクタ」です。ロクタは和紙の原材料、雁皮やみつまたといったジンチョウゲ科と同種です。ロクタは3月に白い花を咲かせ4月下旬には種が成熟。1年で50センチ、2年で1~1.5メートル、成木は2~5メートルになります。成木になるまでの期間が短く、根を残して伐採するとまた再生するため、環境に良い植物です。白い花より紫の花の方が、そして高地の方が品質の良い紙になります。ロクタの収穫の時期は実りの秋10月頃。最大の秋祭りダサインが終わる頃です。ロクタ紙の作り方は、ロクタの木の内樹皮を乾燥させて保管し、水につけ柔らかくし煮ます。チリをとり叩解し、型を使い漉き込みます。その型をヒマラヤの大地で日光に当て干せば出来上がりです。ロクタ紙の特徴は防カビや防虫性があり繊維の毛足が長くとても丈夫です。それは「1000年もつ紙」とも言われるほどです。染色やシワができてもアイロンで元に戻すことも可能です。

種類の豊富なことがこの紙の大きな魅力の一つ

スタンダードといえるナチュラルから始まり、さまざまなカラーに染めた「プレーン」紙。現地の草花が漉き込まれたフローラ、本物の草花の影だけを写し込んだ「シャドーグラフ(シルエット)」紙。ゴツゴツとした「エンボス」紙。蝋纈染め手法によって他の紙には見られない透明感の「バティック(鑞引き紙)」。藻や木片、紙片、織布の素材を漉き込んだ「マテリアル」紙。多くのモチーフとヴァリエーションのある「プリント」紙。どのジャンル一つとっても特徴的な紙が揃っています。

ロクタ紙の歴史

ロクタ紙の歴史はとても古いです。1000年以上前からヒンズー教や仏教の経典にも使われていました。しかし19世紀の半ばイギリスから大量生産された紙を輸入し、伝統的なロクタ紙の生産は大打撃を受けました。その中ネパールの高地の人々はロクタ紙の生産を続けてきました。最近では自然素材として注目され、海外での需要も高まりました。ロクタ紙を使った製品のバリエーションは豊かです。壁紙や障子、ふすま紙、ランプシェイドなどのインテリア、文房具など様々で日本でも取り扱われています。この1000年以上もの間、作り続けられたロクタ紙。すべて手作りで環境にも良い自然素材のロクタ紙は魅力がいっぱいです。

記事/Tomoko Watanabe