culture 素晴らしい文化

【特集】エベレストコーヒー販売 筒井ご夫妻インタビュー

20数年前から国際交流のボランティアに関わり、その中でネパールの田舎で親を失った女の子たちの支援活動をしてきた筒井ご夫妻。
ネパールでは、1996年〜2006年まで国内紛争が続いていたため、その影響から、親をなくした子どもたちが多く存在していました。そこで筒井夫妻は、子どもたちへの生活支援・就学支援を中心として、子どもたちの家を建てたり、学校を建てたり、学校に鉛筆やノートなどの物資を送ったり、「寄付」として金銭的な支援をしたりと、直接的に「物資」や「お金」を届ける支援を続けていました。

「自分たちが努力をしなくても、物資や寄付が送られてくる。」

長年にわたる支援活動の中で次第にその支援に対する、現地の人々の「依存」を感じるようにも。そこで、現地ネパールに対する支援を、「物資・資金援助」の直接支援ではなく、現地の人々による自助努力による「自立」を促進していきたい、永く継続的に続いていく「循環するサイクル」を産み出しという想いからこのエベレストコーヒー販売が始まっています。エベレストコーヒーの味は、全体的に透き通った印象の中でも、コーヒー豆のしっかりとしたキレとコクと深い味わいがあり「エベレストはヒマラヤ山脈の透き通った環境の中で育った豆」という絵が頭の中で浮かぶ程の極上のコーヒーでした。

──エベレストコーヒー飲ませていただきました。 凄い味もすっきりしていて、パンチがあって透き通っていて素晴らしいコーヒーだなと思いました。このレベルのコーヒーはあまり出会わないと思います。

ありがとうございます。 元々コーヒーが好きで、たまたま6年くらい前にネパールのお土産で持って帰ってきたのがエベレストコーヒーとの出会いでした。最初に飲んだ時に、シンプルに美味しかった。それがまず一番で。美味しくなかったら販売していないと思います。 自分がおいしいと思ってないものを人になんか勧められないですからね!!

──もともとコーヒーはお好きだったのですね。

はい。ハンドドリップで飲み始めたのは今から40年前くらいでした。それまでインスタントコーヒーはネスカフェくらいしか飲んでいなかったのですが友達からブルーマウンテンをもらって。それが本当に美味しくて、それがコーヒーを好きになったきっかけです。それから、毎日淹れて飲むようになりました。今発送の準備をしているのですが、今部屋の中が、エベレストコーヒーの香りで部屋が充満しています。一番いいのはこの瞬間です。

──うらやましいですねぇ!コーヒーって本当にいい香りで飽きないですもんね。コーヒーは豆の質、淹れ方によって変わるのでそこは難しいなーと思いますね。

そうですね。 豆の焙煎はベテランの焙煎士さんの所にお願いして一級品に仕上げてもらっていますが、あとはお客様がどう淹れるかで変わりますね。ここ数年でコーヒーが好きになった人も多くなり、そこからいろんな冒険、挑戦している人が増えて、一時のブームは通り過ぎましたが、今は完全に定着しているはずです。2015年にエベレストコーヒーをやろうと思ったときに、仲間から「今からコーヒーなんか扱うの?もう飽和しているから無理だよ」って言われました。コーヒー豆を扱うなんて商社だけだって。そんなの絶対うまくいかないからやめとけや!!って。でも美味しいコーヒー求めている人は増えているから、これだけ美味しいコーヒーなら大手の隙間に入って買ってもらうことは出来るとおもったので。おかげさまで今は購入者の8~9割くらいはリピーターなのです。

──コーヒーは家で楽しめますもんね。コロナ禍でもネパールからの輸入はできたのですか?

それが日本と同じく2020年3月はネパールもロックダウンしていてその時はギリギリ最後の飛行機に乗りましたが、その次の生豆を8月くらいに発注した時はこなかったのです。 お客様にはネパールから届かないので待ってくださいと伝えて。 本当にぎりぎりの綱渡り状態が続いて、あーもうダメかなーってハラハラ思ったときに届いたのです!

──ネパールにコーヒー文化があることは知りませんでした。

(百合子さん)
実はネパールのコーヒー文化は約25年ほどです。その歴史の中で、日本のNGOも コーヒー栽培に結構力を入れている時期はありました。大企業や団体が短期に取り組んでいたりしていましたが、それだとしっかり根付かないのです。支援がなくなると現地の人たちもなかなか続けられなくてそのままほったらかしになってしまう。何事もそうですが、継続的に本気でやらないとだめですね。

──そういうことだったんですね。あんなに美味しいのに、ネパールのコーヒーはまだ日本に浸透してないですよね。コーヒーといえば南米!みたいな先入観があると思います。

ネパールでコーヒーが出来るんですか?とよく言われます。コーヒー生産においては最北端に位置していますが、ネパールはしっかり世界のコーヒーが出来ると言われるコーヒーベルトの中には入っています。まずコーヒー生産において必要不可欠なことは、高地であること。なので、コーヒーベルトに入っていても生産できない場所もあります。 ヒマラヤ山脈の麓は寒暖の差が激しく、霧も発生するので、コーヒーが美味しくなる条件に非常に適しています。ただ、ネパールの産地は平らな場所がないため重機が入ることができず、大量生産出来るかといわれるとそれは厳しいと思います。ネパールには海もないため、輸出環境という点でも厳しい部分がありますね。

──高地と寒暖差が味の決め手なのですね! 一般的にはコーヒーイコール熱帯で生産されているというイメージが強いと思います。筒井さんは実際にネパールも行かれていましたよね。

(百合子さん)

コーヒーだけのためではないですけど、行く際には農園や産地を訪ねます。農家も一カ所ではありません。コーヒーはやっぱり農産物なので、新しく育てているところより、熟練された方が育てた豆の方が美味しいです。あとは土の具合とか水とか。気候変動の影響などでも味は変わりますね。この前行ったところは、とにかくびっくりするような山奥でした(笑)

──「現地への援助をしていると、努力しなくても物資が送られてくると思ってしまう 筒井様ご夫妻の二人のこれまでエピソードを見た中でとても興味深かったです。 実際にどんな時に感じたのですか?

(百合子さん)

NPOの活動として10年以上現地の孤児院の女の子を支援していたのですが、そのうち頼られてきてしまって。何とか現地の人に引継ぎたかったのですが、いつまでもこちらに請求され続けました。そのうち何もしなくてもこうしてもらえるって子供たちにしみついて、卒業したら進学の費用出してくれるの? とか。施設で生活するよりも、家で暮らしているほうがもう少したくましく育つのではないかと思ったりしました。それに、特に農村では教育を受けても実際仕事がないのです。ましてや女性が独身で生きていけるような社会でもありません。10代でお嫁に行って生きていければいいって。そうゆう将来にしかならない。 なんかもうちょっと仕事を作れたらいいな、というのがありますよね。学校を建設している団体とかありますが、根本的に中々解決できてないような気がします。そんな中、エベレストコーヒーが、現地の方が苦労しながら一生懸命やっているということを知り、私たちが物やお金で支援するのではなく、彼らが育てた豆を買うことで少しは手助けできるなって思いました。

──なるほど。そういう経験の中から、エベレストコーヒーの販売を決意したのですね。 既に日本の流通ってあったのですか?

(百合子さん)

細々と仕入れている人がいたりしたみたいですが、流通っていっても微々たるものだったと思います。初めは看護師さんで長年ネパールに行ったりしている方から購入していました。量も増えてきたので、自分たちで輸入したほうがいいよって言われてそこから本格的にやり始めました。輸入は一般的には船ですが、到着までに無茶苦茶時間がかかるので、飛行機で運んでもらっています。送料高いですけどね。飛行機だと2.3日で到着します。3か月もかかってしまうと豆にとってもよくないでしょうし。

──エベレストコーヒーは本当に美味しいコーヒーですし、みんなに知ってもらいたいって個人的に思っています。色々お話を聞いていると、販売価格100g600円(2021年1月現在)は安すぎるのではないかと思ってしまいました。

(百合子さん)

たまにご褒美で買う値段にしてしまうと毎月買ってくれる人が減ると思いますし、そうなると安定してネパールから買い上げてくるのが不安になってくるのでこの価格でやっています。もともとNPOとかネパール好きな人たちや支援してくれている人達から広げていったので、中々高い値段はつけられないというのも理由の一つです。オーガニックとかの国際認証みたいものもありますがそういうのは取ってないです。ネパールはお金がないですから農薬とか化学肥料とかは買えない。そうしたものを使わないからおいしいコーヒー豆が出来るというのもあります。とにかく地道に一生懸命になってやって、こうしてご紹介していただいて発信できるのはありがたいなって思います。

──インターネット以外の活動ってされていますか?

あんまりないですが、「エベレストカフェ」は今までに10回くらい開催しました。それは扱っていただいているカフェ、レストランでカフェをひらいて、エベレスコーヒーを楽しんでもらうという催しです。お客様のところへ行って親睦を深めて色々やりたいなって夢は広がります。私の人生の最後の楽しみですね!(笑)

「コーヒー豆の美味しさと同時に物語、ストーリー性が一緒になっていると思っていてそこを大事にしたい」

──コーヒーブームが起きている中でも物語があることは大事だと思います。 ただ美味しいだけでは伝わらない部分ってありますよね。そしてそれが美味しい要素に変わる。

人生って面白い、色んな経験が出来ますから。若い時から飽きっぽい性格だったけれど、エベレストコーヒーは、稼ぎは少ないけど今はライフワークみたいなものです。妻はアフガニスタンなどネパール以外の支援活動もやっていますが、僕は妻を通して寄付活動をしているので、これを「間接寄付」と呼んでいます(笑)

──間接寄付、うまいですね(笑)!!最後に筒井ご夫妻の今後の展望を教えていただければと思います。

私たちは、一般的な販売業者と違ってコーヒーを売って利益をあげようという気持ちでやってはいません。よく店舗はどこですか?と聞かれるんですが、私たちが一軒のカフェをやっても消費量はたかがしれている。ネパールから豆をたくさん買い上げることが大事なんです。多く購入することで、現地の人たちに仕事や笑顔が生まれるわけですから。 今流行っているタピオカや以前のナタデココなんかは、商社が一気に農地を作り、流行が終わると農地が荒れ地になりそのあとは仕事がなくなって現地の人が困っている現状がある。 そんなことはしたくないです。コーヒーは毎日飲んで買い続けてくれる人がいるのでとても継続的。現地の方々も職を失わずにすみます。ネパールの女性たちにも働ける環境づくりを継続的にやっていくこ事が一番大事なことだと思っています。なので、どれだけ売りました!ではなく、どれだけ買いました!が私たちの目指すところです。

インタビュー/構成 Yu Kondo

エベレストコーヒー輸入・販売

エベレストレード
筒井 百合子 ♾ 克佳
HP : 090-3167-2720
website : https://sites.google.com/view/everest-cafe/home
E-mail : tsutsui21@gmail.com