culture 素晴らしい文化

商業民族タカリ族、チベットの岩塩をネパールやインドへもたらす「塩の道」

商売上手は料理上手、ヒマラヤ岩塩の交易で活躍

インドとチベットの間の「塩の道」と呼ばれる交易ルートを独占していた少数民族がタカリ族です。中央ネパールのポカラという町から北部一帯が、タカリ族の居住地域とされます。特にアンナプルナ地域タカリ族の居住地域であり、かつて交易で栄えたトゥクチェ村が有名です。交易で財をなしたタカリ族の石造りの屋敷がメインストリートに立ち並ぶ、美しい村です。
350万年前以上にこの地に居住を始めたチベット系のタカリ族は、チベット交易を営んできた商業民族です。海がないネパールでは、チベット産の塩はとても貴重なものでした。ミネラル豊富で独特の風味を持つ「ヒマラヤ岩塩」は日本でも注目されました。その塩をヒマラヤ山脈を越えて運ぶ交易により、タカリ族は独特で豊かな文化を築いていきました。村名のトゥクチェはチベット語で「塩の貿易地」を意味します。

タカリ族の名門一家は「スッパ」と呼ばれた、ネパール屈指の商業民族として、ヒマラヤ貿易に携わりました。かつて「ヒマラヤの商業民」として塩貿易で活躍した経験から蓄積した「文化資本」が彼らのポカラでの観光産業確率に大きく貢献しました。

外国人登山者や観光客の間で評判、タカリ族のダルバート

ネパールの代表的な家庭料理としてダルバートがあります。ダルバートとは、ダル(豆スープ)とバート(米飯)の合成語。家庭や民族、レストランでも味付けや盛り付けが異なってきます。タカリ族のダルバートは、他のものに比べて品数やダルが違います。そして美味しいと有名です。ずっと昔からタカリ族が交易を担っていたことで多くの人々がこのダルバートに接してきました。今でもこの地を訪れる外国人登山者や観光客の間でその美味しさは評判になっています。


記事/Ami Inoue