1980年に世界遺産に登録された「アクスム」はエチオピア北部の街でアドワ山地の麓に近いティグレ州に位置します。かつて栄えたアクスム王国の中心地です。国教としてキリスト教を初めて受け入れたのがこの街であることもあり、現在の「エチオピア文明」発祥の地とされています。アクスムは多くの歴史的に貴重な考古遺跡群が残されており、見どころが盛りだくさんです。紀元前10世紀、イスラエルのソロモン王とイエメンのシバの女王との間に生まれたメネリク1世がエチオピアに渡り、アクスムを中心とした国が栄えました。紀元前5世紀にはアクスム王国が建国され、都としてアクスムは繁栄します。1世紀頃からはローマ帝国やビザンチン帝国と並ぶ紅海沿岸の海上貿易で栄えました。そして4世紀に入りエザナ王の時代に最盛期を迎えました。王自身はキリスト教に改宗し、王国はキリスト教国となりました。また、「オベリスク」を建てるなど文化的に貴重なものを残しています。
オベリスクとは
「オベリスク」とは王の権力を象徴する石碑です。1枚の花崗岩を彫刻して造られたものです。アクスムで2番目の大きさを誇る高さ25メートルのオベリスクは1937年にイタリアのムッソリーニ率いるイタリア軍により持ち去られましたが、2005年にアクスムに返還されました。現在アクスムのシンボルとなっているこのオベリスクは、エザナ王のオベリスクと呼ばれています。エチオピア最大のオベリスクの高さは約33メートルありましたが、建設途中に倒れてしまいました。そして3番目の高さ約23メートルのオベリスクはアクスムのシオン聖マリア教会近くの広場にあります。
シオンの聖マリア教会
「シオンの聖マリア教会」が建てられたのはエザナ王がキリスト教に改宗した4世紀頃です。アフリカで1番古い教会で、モーゼの十戒の石版を収めたアークが収められていると言われている有名な教会です。この教会は女人禁制で男性のみ入ることができます。エチオピアにとって聖地であり、とても重要な巡礼地です。
新シオンの聖マリア教会
新シオンの聖マリア教会はシオンの聖マリア教会が女人禁制のため、1965年にハイレ・セラシエ皇帝がすべての人が礼拝できるように建立しました。外観は17世紀ラス・ミカエル皇帝の王冠をかたどり造られています。内部の壁には色鮮やかなステンドグラスが貼られており、驚くほど広く見ごたえ十分です。聖堂内で修道士が1000年前の羊皮紙に植物や卵をインク代わりに書いた聖書を見せてくれます。昔の物とは思えないほど、色が鮮やかです。
是非一度は行ってみたいエチオピアの世界遺産のひとつ。エチオピア文明発祥の地アクスムの街は考古学的にも貴重なお墓や教会など見どころが盛りだくさんです。
記事/Tomoko Watanabe