ラオスの伝統工芸と言えば、「織物」が有名ですが、ラオスの「シン」という民族衣装をご存知でしょうか。「シン」とは女性用の一枚布を筒形にした巻きスカートのことです。
民族衣装は儀式や祭事、結婚式などの正装として着るイメージがありますが、この「シン」はラオスの人々に普段着としても親しまれています。50以上の民族が暮らす多民族国家のため、地域により様々な種類があり、柄や丈が異なります。各民族がそれぞれ織りの技術を受け継いでおり、「シン」に織り込まれている柄にも様々な意味があります。
素材は主にシルクやコットンが用いられています。高級なシルク製は結婚式などで着用されますが、動きやすく洗濯もしやすいコットン製の「シン」は日常生活の普段着として着用されています。
「シン」は腰布(フゥア・シン)と真ん中の部分(プン・シン)と裾の部分(ティン・シン)の3つにわかれています。町中のお店には「シン」用の生地が売られており、一枚布の生地を購入すると、仕立ててくれますが、既製品も売っています。ラオスの女性は「シン」を美しく着るために、自分のサイズに合わせ、オーダーメイドで作ることが多いです。織物のデザインには流行はありませんが、「シン」の丈には流行があり、最近はふくらはぎから膝下と短めに作る人が多いそうです。
ラオスの織物の歴史
ラオスの「織物」の歴史は、なんと2000年以上。「シン」の生地を織るのは、昔から女性の仕事です。その技術は母から娘へと受け継がれています。ラオスでは、良い妻は「シン」を上手に織ることができる人と考えられています。しかし、ラオスの近代化に伴い女性が洋服を着用することが多くなったことや、織物を職業にする人が減ってきていることもあり、「織物」の伝統が消えていくという問題も起きてきています。ラオスの織物は、文献からは明らかにできない歴史を読み解くこともできると言われています。そんなラオスのすばらしい文化を受け継いでほしいですね。
記事/Tomoko Watanabe