2009年にユネスコの無形文化遺産に登録された、インドネシアの伝統的な染物「バティック」をご存知でしょうか?
日本で古くから「ジャワ更紗」という名で親しまれている「バティック」とはインドネシア各地で作られている、ろうけつ染めされた布地のことです。インドネシアでは地域により伝統の色や柄を継承していますが、その中でジャワ島のものが特に有名です。
一枚一枚手作業で染色される伝統手法は、インドネシアで古くから伝わるものです。
「バティック」の歴史
「バティック」の起源はヒンドゥ・ジャワ王国の王宮文化にあります。王族や一部の貴族のみの着用が認められている特別なものでした。当時は王族御用達の高級品として、特定の階級しか身に着けられない禁制模様もありました。
1949年にインドネシア共和国としての独立をきっかけに、「バティック」はインドネシア全土に広まりました。インドネシア初の大統領スカルノは独立の象徴として、バティックインドネシアと呼ばれる新しいバティックを作り、今では、インドネシアの全国民に愛される伝統的な布となっています。
バティックの作成方法
バティックの作成方法は4種類あります。
1.バティック・トゥリス(手描きバティック)
チャンティンと呼ばれる器具にロウを流し込み、布に直接模様を描いていきます。ロウを置き、染色し、ロウをはがすという作業を繰り返し行いながら、絵柄を描きます。表と裏の両面に手描きするので、表裏の区別がつかないほどです。この方法は熟練の職人の技が必要で、緻密な絵柄のバティックの制作には2か月以上もかかるといわれています。そのため、バティック・トゥリスは高級品です。
2.バティック・チャップ(型押しバティック)
チャップと呼ばれる銅製のスタンプにロウを塗り、布に絵柄を移すという方法です。型押しでも一つ一つ手作業で、片面押しと両面押しがあります。トゥリスに比べ、量産しやすいため、安価になります。
3.バティック・コンビナシ(コンビネーションバティック)
バティック・トゥリスとバティック・チャップを組み合わせた方法です。
4.プリントバティック
スクリーン印刷による、布にプリントしたバティックです。デザインや色使いが豊富で安価なものが多いですが、ろうけつ染めではないのでバティックとは呼べないかもしれません。
他にもバティック・イカット・チュルップ(絞り染め)やバティック・チョレットなど、ロウを使わないバティックがあります。
2009年10月2日に「バティック」がユネスコの世界無形文化遺産に登録された記念にインドネシアでは10月2日を「バティックの日」と定めました。
その日だけではなく、毎週金曜日は「バティック」着用を推奨しています。
最近では公式の場や式典などのフォーマルな場だけでなく、普段でもバティックを着ている人を多く見ることができます。インドネシア人に愛されている「バティック」。そんな魅力あるバティックを是非一度、着て楽しみたいですね。
記事/Tomoko Watanabe