インドネシアのバリ島では西暦の他に「ウク暦」と「サコ暦」の2つの暦を使っているのはご存知でしょうか。この暦によりヒンドゥー教の祭礼や行事が行われます。
ウク暦
「ウク暦」とは別名「ジャワ・バリ暦」とも言われ、バリの人々の生活に密接しています。もともとは古代ジャワで使われていました。ウク暦は1か月が35日で6ヶ月が1年で、1年は210日となります。ウク暦に沿った最大の祭礼は「ガルンガン」です。
先祖の霊を迎える大切な祭礼「ガルンガン」
ウク暦に従って210日ごとに行われる「ガルンガン」はバリ・ヒンドゥー教徒にとって、とても重要な祝日です。日本のお盆に似た祭礼で、先祖の霊が帰ってくる日とされ、人々はお供え物をし、祈りをささげます。1週間ほど前からガルンガンを迎えるための儀式が始まります。前日のプナンパハンは玄関先にペンジョールという竹の飾りつけをし、先祖の霊はこの飾りを目印に帰ってきます。「ガルンガン」当日は、沐浴をし身体を清め、正装をし寺院などにお参りします。「ガルンガン」の10日後のクニンガンは先祖の霊を天上に送る日となります。
サコ暦
「サコ暦」とは別名「ヒンドゥー・バリ暦」とも言われ、16世紀、バリ島にジャワ・ヒンドゥー文化が広まる前から使われてきた暦です。太陰暦と太陽暦を組み合わせたものです。月により1か月が29日から30日となります。サコ暦に沿った祭礼の「ニュピ」は特に有名です。
バリ島のお正月「ニュピ」
バリ・ヒンドゥー教徒にとって最も重要な祭礼「ニュピ」。バリ島のお正月「ニュピ」は別名「静寂の日」とも呼ばれ、語源はバリ語のスピ(静かな)の意味からきています。毎年日程が変わりますが、例年3月頃、サコ暦に従って行われます。
ニュピの前日は月が隠れる暗月(ティルム)の日です。この日は冥界の神マヤが大掃除をおこなうために、悪霊のブト・カロが地上に這い出てくると言われています。そのため、各地でオゴオゴと呼ばれる鬼の張りぼてを作り村を練り歩いたり、各家庭では鍋釜を打ち鳴らしたり、悪霊祓いの儀式を行います。
「ニュピ」当日は、バリ島全土で、外出、労働、火気、電気、殺生などが禁じられ、追い払った悪霊が去るのを瞑想して静かに待ちます。
インドネシアはスマトラ島やジャワ島、バリ島など約1万4千もの大小の島によって構成され、民族構成もおよそ300からなる多民族国家のため祭礼や行事も様々です。
その中でも「ガルンガン」と「ニュピ」はバリ島のヒンドゥー教で特に重要な行事です。
そんな、バリ島の重要な行事を、現地に訪れて体験してみるのはいかがでしょうか。
記事/Tomoko Watanabe