「神様の階段」とも称されるインドネシアのバリ島の棚田は、2012年に世界遺産に登録されました。
2000年以上前に神と人と自然の調和を重んじた「トリ・ヒタ・カラナ」というバリ・ヒンドゥー教の哲学が生まれました。サンスクリット語で「トリ」は「3」、「ヒタ」は「安全、繁栄、喜び」、「カラナ」は「理由」という意味です。
9世紀には、その哲学を表現したバリ島伝統の「スバック(水利システム)」が作られました。今でもバリの人々によって維持されています。「スバック」とは水を管理し棚田を守る水利システムで、それぞれ寺院を保有しています。寺院で清められた神聖な水は、農民たちが切り開いた水路を通り各水田に平等に分配されます。
「バリ州の文化的景観」とは、「トリ・ヒタ・カラナ」の精神を象徴するスバックの水利システムにより維持されている田園地帯や寺院、湖などが点在する1万9500ヘクタールにも及ぶ5つのエリアのことです。
世界遺産に登録された「バリ州の文化的景観」の5つのエリアを紹介
ウルン・ダヌ・バトゥール寺院
バリ島の北東部キンタマーニ高原にあるバトゥール湖畔の丘の上に位置する「ウルン・ダヌ・バトゥール寺院」。「ウルン」は先、「ダヌ」は湖を意味します。1917年と1926年のバトゥール山の噴火により破壊されたため、現在の場所に移されました。この寺院はバトゥール湖の女神「デウィ・ウルン・ダヌ」を祀っており、バリ有数のパワースポットとしても有名です。透明度が高い真っ青なバトゥール湖が寺院から見下ろせる絶景も魅力的なおすすめスポットです。
バトゥール湖
バリの水がめと言われているバトゥール湖はバリ島の北東部のキンタマニー高原にあり、バリに住む人々の水の供給源です。
パクリサン川流域のスバック景観
ティルタ・ウンプル寺院に沸く伝説の泉とバトゥール山からの湧き水による川が合流したのが、パクリサン川です。この流域にはバリ最古の景観が残っています。
バトゥカル山のスバック景観
バリ島中部タバナン県のバトゥカル山のふもとに広がる丘陵地帯です。このエリアでは一面に広がる雄大な棚田の景色を見ることができます。
タマン・アユン寺院
バリで最も美しいヒンドゥー教寺院は1634年に建てられ、1937年に改修されました。水や豊穣へ感謝する寺院で「水の神殿」と言われています。
バリ島と言えば、楽園のリゾート地というイメージですが、世界遺産「バリ州の文化的景観」を訪れれば、神と人と自然の調和を重んじるバリ・ヒンドゥー教の哲学を感じることができます。パワースポットや神秘的な絶景など魅力も盛りだくさんです。是非一度、バリ島の世界遺産を訪れ、歴史や文化に触れてみるのも良いのではないでしょうか。
記事/Tomoko Watanabe