日本ではあまり知られていないインドネシアの都市「ブキティンギ」はインドネシアの西スマトラ州に位置します。人口は約11万人。面積は約25平方キロメートル。サゴ山、シンガラン山、メラティ山の3つの火山に囲まれた高原の町です。赤道の約50キロメートル南に位置しますが、平均気温は23度と過ごしやすく、豊かな自然の広がる避暑地として人気がある観光地です。
古くからミナンカバウ文化の中心として栄えてきた「ブキティンギ」は西スマトラ州の主要民族であるミナンカバウ人の故郷です。ミナンカバウ人は98パーセントがイスラム教を信仰しており、女性が社会の中心的な役割を果たしています。
ミナンカバウとは「ミナン」が勝つ、カバウが水牛を意味しています。これは、この地方の文化を象徴しています。農業が主体のため、牛は水田耕作の重要な働き手です。築300年以上の牛の角がかたどられたの木造家屋や民族衣装の角状に形作られた頭巾、そして牛レースなどの伝統行事などが残されており、このような美しい景観と伝統文化を見るために、多くの観光客が訪れます。
ブキティンギ発祥の「パダン料理」
西スマトラの料理と言えば「パダン料理」。西スマトラのミナンカバウ地方は、「パダン料理」発祥の地です。数種類のスパイスや唐辛子などを使い、肉や魚をココナッツミルクで煮込む料理が多いという特徴があります。ブキティンギでは、「ルンダン」という牛肉を煮込んだ料理が名物となっています。パダン料理のレストランでは、ショーケースに料理の入ったお皿がたくさん積み重ねられている光景を見ることができます。席につくと小皿に取り分けられた数十種類の料理が並べられ、好きな物を食べた分だけお金を払うシステムとなっています。
「ブキティンギ」の見どころ
1,ガライシアノ渓谷
ブキティンギの南西に広がる渓谷で、インドネシアのグランドキャニオンとも呼ばれています。展望公園から見る景色は絶景でガイドと共に渓谷を歩くこともできます。展望公園には歴史を感じる旧日本軍が作った防空壕が残っています。
2,牛レース
ブキティンギ郊外のバトゥ・サンカル村で伝統的な「牛レース」が行われています。牛2頭に木製のハーネスを付け、騎手が牛の尾を引いたり噛んだりし水田を駆け抜ける迫力満点のレースです。
3,キナンタン公園
キナンタン公園には、博物館や動物園、小さな遊園地があります。ミナンカバウ様式で建てられた博物館には、ミナンカバウ文化の衣装や家具などが展示されています。博物館に隣接されている動物園には、トラやゾウ、鳥類などを見ることができます。西の小高い丘の上には、1825年にオランダが独立戦争に対抗するための基地「コック要塞」が築かれました。現在は大砲のみが残されています。
「ブキティンギ」は日本ではあまり知られていませんが、インドネシアのスマトラ島の中では、自然も多く観光地として人気があります。「ブキティンギ」の豊かな自然やパダン料理、ミナンカバウの伝統的な文化に触れてみるのはいかがでしょうか。
記事/Tomoko Watanabe