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カシミヤの上をいくネパールの伝統的毛織物「パシュミナ」とは?

「パシュミナ発祥の地」ネパールで重宝されている素材

パシュミナとは、高級ウールとして有名なカシミヤよりも繊細で肌触りの良い、インドのカシミール地方に伝わる手織りの毛織物。肌ざわりの良い希少な繊維として、世界中の人々から愛されています。自然の繊維、獣毛の肌ざわりの良さでは、カシミヤよりも優れていると言われています。パシュミナの中でも、伝統的なカシミール産のパシュミナには、標高4000メートル以上のヒマラヤの高地だけに生息するパシュンの冬毛が使用されています。

パシュンは、カシミヤ山羊の中でも、犬くらいの大きさしかない小柄なカシミヤ山羊。パシュンの原毛は、採取の難しい希少なものなのです。パシュンの毛は繊細なため、機械によって糸を紡いだり生地を織ったりすることができないのが特徴です。

パシュミナとカシミヤの違い

カシミヤとはカシミヤ山羊から取れた獣毛、またはカシミヤ山羊の毛を採取し、それから織った毛織物のことをいいます。名称は、インド北部高山地帯のカシミール地方の綴りに由来しています。非常に細く、柔らかくて独特のぬめりがあるのが特徴で、繊維は保温性と保湿性に優れています。1939年の米国羊毛製品表示法で定義されたカシミヤの定義は 「カシミヤ山羊から採取される微細な獣毛から製造しない限り、カシミヤと呼ぶことはできない。」繊維の細さ、繊維の長さ、ヘアーの混入率によりランク付けされます。

ランク繊度繊維長ヘヤー混率
1級品14ミクロン前後34mm以上(最高で38mm位)0.1%
2級品14~15ミクロン代30mm~34mm0.2%
3級品16ミクロン前後28mm~32mm0.3%以下
4級品16ミクロン以下30mm以下0.5%
5級品16~17ミクロン以下28mm以下0.5%以上
8~9級品17~18ミクロン24mm以下1.0%以上

1ミクロンは1/1000ミリ 、ビキューナ12ミクロン・上質ウール19~20ミクロン・人間の毛髪は約40~50ミクロン。

カシミヤ山羊の産毛の状態と自然環境

カシミヤ山羊の生息地の寒暖差は70℃、年間降雨量100~200mmという食料である牧草も生育しにくい厳しい自然環境の中、厳寒から身を守る為に非常に繊度の細い産毛になりました。自然環境が厳しい年は、良質の産毛が多く、穏やかな年は、良質の産毛が少ないとされています。カシミヤの繊維の細さ15~20ミクロン。一方パシュミナの繊維はカシミヤよりもさらに細く10~15ミクロンなのです。極寒の地に生息するチャングラ山羊特有のものであり、最高級のカシミヤに属する繊維の細さのため、驚くほど軽く暖かいです。残念ながら日本の品質表示法ではパシュミナという表記は認められておらず、カシミヤと表記する必要があり、日本ではなかなか馴染みのない言葉になってしまっています。

ネパールチャングラパシュミナ
ネパールでは、このパシュミナの付加価値を高めるため、ネパール政府とネパールパシュミナ協会が「チャングラパシュミナ」というブランドを作りました。「チャングラパシュミナ」はネパール政府公認素材として、国全体で普及を図っています。


記事/Ami Inoue