「ヤシの木」という言葉を聞いてイメージするのは、「南国」や「ココナッツ」という言葉ではないでしょうか。
インドとスリランカの南西に位置するモルディブは海抜2メートルにも満たない約1190の島が連なり、珊瑚礁の環礁を形成しています。
「ヤシの木」には種類があり、ココナッツの実をつけるのは「ココヤシ」という種類です。「ヤシの木」は南国のリゾートでよく目にしますが、モルディブ人にとって一番大切な木です。モルディブには、「ヤシの木」よりも高い建物を建ててはいけないルールや、「ヤシの木」をむやみに切り倒してはいけないというルールがあるほど、「ヤシの木」を大切にしています。
そして「ヤシの木」はモルディブの伝統料理や伝統工芸、楽器など様々なものに使われています。
伝統料理や飲み物
ヤシの実から取れるココナッツウォーターはジュースとして水分補給に優れた飲料水となります。果肉を削った「ココナッツ」は伝統料理の「ガルディア」、「マスリハ」、「マスフニ」などに入っており、モルディブ料理には欠かせない食材です。
「コプラ」はココヤシの果実の胚乳を乾燥させたもので、内部の胚乳から抽出精製されたものが「ココナッツオイル」となります。ヤシの殻は加工してカップなど食器としても利用したり、ヤシの外皮の繊維をより合わせ、ロープを作ったりと、ヤシは捨てる所がありません。
モルディブ伝統の船「ドーニ」
「ドーニ」はヤシの木からできたモルディブ伝統の木造船。古くからモルディブの人々の移動や漁業などに使われ生活の中心となっています。ドーニは設計図なしに、使う人のニーズに合わせて手作業で作られます。職人の技能が表れる芸術品となり、この技術は次の世代へと受け継がれています。
モルディブの伝統打楽器「ボドゥベル」
「ボドゥベル」はヤシの木の幹と樹皮で作られた、モルディブらしい作りの大きめの太鼓でで、11世紀頃に西南アフリカから東アフリカを経由し船乗りたちにより伝わったとされています。結婚式やイベントなどで演奏され、リゾートホテルやコテージなどでもパフォーマンスが行われており、モルディブの欠かせないエンターテイメントとなっています。
このようにモルディブの人々にとって「ヤシの木」は生活に欠かせない一番大切な木なのです。モルディブに行った際には、モルディブの暮らしを伝える伝統文化を是非体験してみたいですね。
記事/Tomoko Watanabe