トルンは、組まれている竹の長さが異なっていて、音がでる部分も枠組みも全て竹でできています。すだれのような形で糸に繋がれ、珍しい形をしています。天然素材の竹から、優しいベトナムの音色が奏でられます。
聞いたことがない音楽や、日本の楽器にない音を聞くという貴重な体験は、学びと発見があります。リズムや音色に親しむことで、楽器を演奏してみたくなるきっかけになるかもしれません。
演奏の工夫
演奏用として使われるトルンは人の背丈よりも高く、大きい為、演奏者は立って演奏します。2本の撥(ばち)で、垂直に連なる竹の束を叩くと鳴り、1度に4つの音を鳴らすことができます。音階は、竹の長さや太さでつくられています。12~16本の竹筒を並べたもので、伝統音階が表現されます。腰の高さの小さなトルンもあります。演奏を見ていると簡単そうに見えますが、体をすごく使います。トルンは乾燥に弱く、割れてしまわないように、定期的なメンテナンスが必要。虫がつくことや、竹が腐ることを避ける為の処理がされています。
少数民族の伝承文化
ベトナムの土壌や気候が適している為、竹がよく成長します。トルンの起源は、一人が持ち、もう一人が弾く、二人で弾くスタイルでした。田畑に動物を寄せ付けないように鳴らす道具として使われ、遠くまでよく響きます。畑仕事の合間に奏でられたものが、そこから村祭りや、国際舞台で披露され、文化的活用に発展しました。ハノイでは、新年を祝うコンサートなどでトルンの合奏を聞くことができます。
竹楽器
竹を生かした楽器作り、ベトナムの54の民族の民族楽器の中で1番多いのが竹製のもの。生活に身近な存在で、歴史から儀礼・儀式と竹楽器との関わりが密接に繋がっています。ベトナムの竹は、日本の竹より薄いです。
トルン楽器にちなんだ曲
「トルンのメロディー」「トルンは畑を守る」「タイグェン地方の舞踏曲」「小さな鳥」「泉のトルン」「トルンの音色」などがあります。
竹楽器の音を耳にして感じ取ること、竹楽器に親しむ機会が増えればベトナムの街歩きをゆっくり楽しんでいただける機会となります。普段から耳にすることで、気に入ってもらい、聞き続けてくれる人が増えるとより良い文化が続きますね。
記事/Ami Inoue