culture 素晴らしい文化

木を伐採することなく樹皮から生産される、分厚い手すき和紙「サーペーパー」とは

和紙を作るのに大切なのが良質な水と紙漉きをする人の技術です。和紙には、さまざまな用途があり、日本の和紙が楮(こうぞ)を素材としているのに対して、タイのサーペーパーは、「桑の樹皮」を素材としています。

和紙の種類は、他に楮紙(こうぞし)、強制紙(きょうせいし)、ちりめん紙、もみ紙、更紗紙(さらし)などがあり、伝統を受け継いだ技術、豊富な種類があります。江戸時代、特有農作物として重視された「茶、桑、楮(こうぞ)、漆」は、4木と呼ばれました。

ボーサーン村 「Bo Sang / บ่อสร้าง  (ボーサーン)」

チェンマイ県サンカンペーン郡ボーサーン村の工芸品の「ボーサーン傘」という唐傘 (からかさ)があります。紙すきから骨組み、紙張りなど伝統的な方法でボーサーン村で100年に渡り生産してきました。チェンマイは、バンコクに次ぐ都市で、唐傘工房があり大・中・小さまざまなサイズのボーサーン傘が作られています。工房では、職人の製作方法を見学することができます。 

ボーサーン傘の起源

今から100年近く前に、修行僧のルアン・ポ―インターがビルマ(ミャンマー)へ修行に出かけた時に、「サー」と呼ばれる桑の木の樹皮で出来た紙で作る傘を発見し、生産方法を学習し持ち帰りました。

ボーサーン傘祭り&サンカンペーン工芸品フェスティバル 

唐傘の展示など文化を紹介する祭です。1984年より毎年1月の第3金曜日から日曜日まで3日間にわたって開催されます。至る所に美しい傘が飾られてあり、チェンマイの伝統工芸品をゆっくり見て回ることができます。ボーサーン傘は、カラフルなデザインで、晴雨兼用で使えます。

サーペーパーの作り方

植物の繊維を水の中で晒す時に、木枠「簀桁 (すけた)」という道具を使用します。イメージに合わせて、葉や花などを挟み込むことが出来ます。人の手で一枚一枚生産されていて、長年経っても劣化しにくい中性紙です。

桑の木 サーペーパーの原料

クワ科クワ属の桑の木で、タイ語で「saa  (サー)」と呼ばれ、広葉樹、落葉性です。桑の木は、水を好み、桑の木質の強度は、硬いです。日本、ヨーロッパ、インド、北アフリカ中東など、桑の木は、世界各地で1,000品種以上といわれています。

桑の葉

桑茶として親しまれ、食物繊維が豊富、糖の吸収を抑える働きがあるとされています。タイのハーブティー売り場でよく売られています。ノンカフェインなので、子どもや妊婦さんでも安心して飲むことができます。中国最古の薬物書とされる「神農本草経」で中薬として記載されています。

桑の実

別名「マルベリー」とも呼ばれています。小さな粒々が集まった形の果実です。ビタミン、フィトケミカルなど豊富な栄養素を含んでいます。桑は雌雄異株で、実がなるのはメスの木。桑の実は、成り始めは白く、赤い実は、まだ未熟です。黒紫色に熟すと食べごろで、生のマルベリーは、甘酸っぱいです。

紙の発明

中国の「蔡倫 (さいりん)」という役人が西暦105年に、樹皮、麻、古布などを原料とした製紙術を考案し、中国の四大発明に挙げられています。紙のない時代は、木の葉、石、皮など、その土地に育つ、手に入りやすい材料に書き記していました。中国において桑は、「聖なる木」とされ縁起が良いです。人間が文字を持たなかったころ、情報伝達手段は言葉だけに頼っていました。紙は、情報を正確に伝える手助けになり、貴重品を包むのに使われていたと言われています。製紙技術は、中国から世界へ広がりました。

「サーペーパー」の原料は、森林の中にあり、書き物、経典、版画、絵など人の暮らしや文化と共に発展してきました。土地の紙や紙文化に興味をもつと、素材の良さや紙造りに適した土地のことを面白く知る事が出来ます。桑の木は、役に立つ木とされてきた樹木です。天然の手すき紙の手触りを楽しむのも良いですね。

記事/Ami Inoue