タイ語で、「ยักษ์ (ヤック)」とは、鬼・夜叉という意味です。ヤックは、鬼の姿をした魔除けの守護神です。タイで鬼は、恐ろしいイメージではなく、王様を守る正義の鬼神とされています。スワンナプーム空港の、日本に帰国する出発フロアで見ることができます。とても大きいヤックを寺や建物の前でも見ることができます。
ワット・プラケオ本堂(エメラルド寺院) 守護神
首都バンコクに位置し、1782年に建立された、タイで最も格式の高い王室寺院です。仏教儀式の場であるので、僧侶がいないのが特徴です。本堂のエメラルド仏は、タイで最もあつい信仰を集めている仏像です。タイ語で「Wat (ワット)」お寺、「Phra Kaew (プラケオ)」翡翠(ヒスイ)という意味です。エメラルド仏を悪霊から守っているため、ヤックは、ワット・プラケオで高さ6mの魔除けの守護神として立っています。
叙事詩(じょじし)ラーマキエン
ラーマキエンは、タイの重要な古典文学。ラーマキエンに登場する12体のヤックはそれぞれ名前があり、全てサンスクリット語由来の言葉です。
「ทศคีรีวัน (トッサキーリーワン)」
トッサカンと象の間に生まれた子ども。故に象の鼻を持つ。顔と体は緑色。トッサキ―リートンは、双子の兄です。
「ทศคีรีธร (トッサキーリートン)」
双子の弟。顔と体は赤茶色。
「สหัสเดชะ (サハッサデーチャ)」
多面多臂(ためんたひ)、千の顔と二千の腕を持つとされる。顔と体は白色。
「อัศกรรณมารา (アッサカンマーラー)」
7つの顔を持つとされる。顔と体は濃い紫色。
「วิรุณจำบัง (ウィルンチャムバン)」
顔と体は灰色。
「ทศกัณฐ์ (トッサカン)」
叙事詩(じょじし)ラーマキエンにおける、ランカー国の王。元となったインドのラーマヤナでは、ラーヴァナとして知られる。10の顔と20の上を持つ。顔と体は緑色。
「ว มังกรกัณฐ์ (マンコーンカン)」
頭の上にナーガ(蛇)が載っている。顔と体は緑色。
「ไมยราพ (マイヤラープ)」
顔と体は薄紫色。
「จักรวรรดิ (チャカワン)」
4面8臂とされる。顔と体は白色。
「วิรุฬหก (ウィルンホック)」
マンコーンカんと同じく頭の上にナーガ(蛇)が載っている。顔と体は濃い青色。
「อินทรชิต (インドラチット)」
トッサカンとモント―(マンドーダリー)との子ども。顔と体は緑色。
「สุริยาภพ (スリヤーポップ)」
顔と体は赤色。
仏教寺院
タイには、3万の仏教寺院があると言われています。タイの国民の95%が仏教徒。タイの仏教は、スリランカ、ビルマ、カンボジア、ラオスなど南方より伝来しました。日本の仏教は、中国、韓国、ベトナムなど北方より伝来しました。ルートが異なり、寺院の建築様式、信仰する神々の姿も全く違います。
ヤックは、古代インドの神話に登場する鬼神です。男はヤクシャ、女はヤクシニーと呼ばれ、鬼と神の性格を併せ持ちつつ、人間に恩恵をもたらす存在として祀られています。
記事/Ami Inoue