見る人の目を楽しませる素敵な「カービング」とは、英語で彫刻するという意味です。タイ語で「แกะสลัก (ケ・サラック)」と言います。料理の器、料理に添える飾りとして立体的で華やかな演出ができます。そこにあるだけで喜びが増え、おもてなしの細かい心配りにも繋がります。
材料
スイカ、メロン、りんご、パイナップル、きゅうり、大根、かぼちゃ、トマト、人参などに美しく彫刻をします。フルーツの皮の堅くて食べない部分だけでなく、柔らかいフルーツにも素敵なカービングができます。
歴史
700年前、宮廷に仕える女性たちが王様に楽しく食事をしてもらおうと編み出したとされています。最初のタイ族による王朝、スコータイ王朝時代(1238~1378年)の儀式で、果物に装飾として彫刻をほどこしたのが始まりです。スコータイは、タイ初の独立王国です。
道具
専用のカービングナイフ1本。刃は長く、薄めで、細かい模様を彫れるように先が細く、細かい作業ができるようになっています。
ナイフの持ち手の材質
「プラスチック製は、錆びたり、腐ったりせず軽い」、「ステンレス製は、熱に強く、丈夫で錆びにくい」、「木製は、滑りにくく、持ちやすい」などがあり、自分の手に合った、持ちやすいものを選びます。
モチーフ
花、鳥、葉、つぼみ、動物、幾何学模様など。カービングは、集中力と想像力を鍛えながら、彫刻の精神を向上させます。
タイ人にとって身近なカービング
タイの学校では、授業でカービングを習います。タイ人の手先の器用さ、繊細で豪華な高い芸術性、技術は、生活に根ざした文化になっています。
木造の彫刻寺
バンコクから南東へ160km。タイ東部ウォンプラチャン湾のレムラーチャウェットに位置する、海のすぐそばに建つ「サンクチュアリ・オブ・トゥルース寺院」。1981年より続く建築は、現在進行形で進められており、まだ未完成です。チーク材などを使い、古典芸術、彫刻を後世に伝えること、技術保護を目的としています。クギを使わず、毎日200人の職人がノミ1本で彫り上げ、精密な装飾が屋根、尖塔(せんとう)、壁、柱などに仏像、天女、象などの彫刻がいたるところに施されています。
タイでは、食卓、パーティー料理、特別な日のアクセントにカービングがつかわれます。イメージを膨らませて、フルーツ、野菜、石鹸などにカービングが施されます。鮮やかなカービングは、その場の雰囲気を盛り上げるのに欠かさず、タイの文化、魅せるおもてなしの工夫が学びとれますね。
記事/Ami Inoue