technology interview 花によって運ばれる“気持ち”を増やす ~CAVIN ~

フラワーロスという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
花が生産者から消費者の手に届くまでに、実に30-40%の花が廃棄されている問題が指摘されています。(出典:フラワーライフ振興協議会

CAVINは、フラワーロスの課題を解決するだけでなく、花によって運ばれる気持ちを増やすことで、幸福度の高い社会を実現しようとするスタートアップ企業です。 サービスの内容や想い、利用者の声などについて、CEOのYuya Roy Komatsu氏とPR担当の阿部氏に話を聞いた。

大屋:はじめまして。まずはCAVINのサービスの内容について教えていただけますか?

Roy:CAVINは、生産者と花屋の直接取引プラットフォームで、スマホで簡単に花の取引を実現するウェブサービスです。

大屋:従来の取引に課題があったということですか?

Roy:はい、従来、花の取引は市場の競りを通じて行われていました。生産者は、販売ロットや流通価格は自由に決められず、花屋は、その日にならないと何が何本、いくらで手に入れられるかわかりませんでした。また、競りに参加するための特定条件をクリアする必要があり、卸や仲卸を通じて仕入れる方がほとんどでした。生産者から花屋のもとへ花が届くまでの時間が長く、生産者と花屋が直接、コミュニケーションする機会も限定的でした。

CAVINを利用することで、生産者は好きなタイミング、ロット、値段で出品できます。

また、小さなロットでも出品できるので、試験的に生産した花も扱え、新しい商材のテストマーケティングが容易に行えます。

大屋:なるほどです。小ロットで出荷できるのは、新しい花を扱う時にはありがたいですね。花屋にとってのメリットは何ですか?

Roy:産地直送で入荷できるため、鮮度の高い花を手に入れられます。鮮度が高いので、長時間店頭に並べられますし、お客さんにも自信を持って提供できます。そのため、店頭でのフラワーロスを減らすことができます。

CAVINのサービス概要

Roy:でも、私たちが解決していることは、それだけではないのです。

大屋:お、それは、どういうことですか?

Roy: 例えば生産者は、日々たくさんの花を出荷していますが、花を受け取った人が“わー、きれい!”と喜ぶ感動や感想を受け取ることはありませんでした。分かるのは、いくらで売れたかという情報だけで、それはあまりにも悲しいことだと感じていました。

花に携わる人の多くは、花が大好きな方たちです。その方々がいつも幸せに仕事をしていくことが重要だと考えています。

そこで生産者と花屋が直接コミュニケーションできる仕組みを提供し、商品に関する営業やマーケティング的なやりとりはもちろんのこと、商品への想いや喜びなどを交換できるようにしています。

大屋: 確かに感謝や感動ほど励みになるものはないですよね。

大屋: 一方で流通や廃棄の問題は、様々なもので起こっていますが、どうして、“花”をサービスの対象にしたのですか?

Roy: 私はこれまでの様々な経験から、サービスに関わる方全員の幸福度をあげる取り組みをしたいと考え、事業を行っています。花を扱うことを決めたのは、1.自然の産物であること、2.手に取れるもの、3.時間の幅があることという3つの条件で事業対象を検討した結果です。

大屋: どういう理由なのでしょうか?

Roy: 当初、花以外に貝殻、宝石を候補にしていました。

これらは自然の産物で、自然の美しさに嫉妬する人はおらず、素直に人の心に受け入れられるものなので、多くの扱う人の幸福につながりやすいと考えました。次に、手に取れるものにしたのは、誰かに渡すことができるものは、ビジネスとして成立しやすいと考えたからです。最後に、時間の幅についてですが、美しくあり続けることには、何らか背景があると考えています。美しいものを、手にした人が“なぜ美しいか”を想像することで、美しさに関わった人や事象に気付き、互いの幸福を高めると思っています。切り花の寿命は短く、そこに秘めた美しさを知覚できる機会が多いです。 これらの可能性から、最終的に花を選びました。

CAVINサービスイメージ

大屋: たくさんの方が幸福を感じる素材として、花の可能性にコミットされたのですね!とても新鮮な視点です!
しかし、最初からサービスは受け入れられたのでしょうか?

CAVINを利用されている生産者さんとRoy CEO

Roy:当初は実績もない状態でしたが、前述したような花の持つ可能性、事業への想いに賛同してもらい、生産者2件、花屋2件からのスタートでした。その後、生産者や花屋の方からのクチコミや紹介でサービスが広がっていきました。現在、福岡県中心部の1/3以上の花屋さん、北部九州を中心とした生産者さんにご利用いただいています。

大屋: 創業当初から参加しているクライアントは、よほど小松さんのビジョンに共感してくださったのですね。また、クチコミで紹介されていくなんて、一番嬉しいことですね。実際にサービスを利用している方は、どのような反応をされているのですか?

Roy: ある家族経営の生産者に初めて伺った際、“うちはいずれ、花の生産をやめる”といわれた生産者がいました。 そこではサービスの機能でなく、花による幸福の循環をCAVINがどうしたいかを説明しました。 その後、その方は家族会議を開いて検討をし、花の生産を継続し、CAVINを採用することを決められました。今では、CAVINの大きな取引先のひとつとなっています。これは、生産者の幸福に貢献できた想いで、大変嬉しい体験になりました。

Roy:また、生産者さんが出荷した花に花屋さん向けのメッセージカードがいれてあることをよく目にするようになりました。この行動は、市場経由の流通ではけして起こらないことで、このサービスをやって良かったと感じた瞬間です。

こちらは生産者と花屋の許可をいただいて、CAVINの機能でやりとりした内容を、まとめたものです。感謝や幸せが生まれている事例だと思います。

メッセージのやりとりの様子

大屋: 花屋さんと生産者さんの喜びが伝わってきますね! まさに、幸せの連鎖が生まれていますね。生産者や花屋さんだけでなく、CAVINに関わる人が幸福であることを大事にしているということでしたが、どのような活動をされているのですか?

Roy:保育園でロスフラワーを使った花育を、生産者さん、花屋さんと合同で行いました。園児は、それぞれの大切な相手、家族や犬に想い想いのフラワーアレンジメントを作り、花に触れると同時に、花を送る喜びを体験しました。参加した生産者さんや花屋さんも大変喜んでいました。

阿部さん近影

大屋:阿部さんから見た、小松さんはどんな方ですか?

阿部:常にビジョンありきで動いている方だと思います。そして、その考えを恐れずに発信しています。なので、生産者や花屋の方も、決して身近でないITサービスにもかかわらず、採用いただけているのだと思います。

大屋:阿部さんは在学中のインターン先だったCAVINに、そのまま就職したそうですね。理由は何でしょうか?

阿部:もともとは1年インターンをしたら、東京で就職しようと思っていました。しかし、インターンに参加すると、チーム全員が一つのビジョンに対して熱心に取り組んでおり、ただのインターンだった私にも、一緒にゴールに向かうメンバーとして真摯に接してくれました。

これまで、私はバランスを取って進路を歩んできて就職活動も同様に進めていたのですが、中学時代に周りが無謀と思うくらいの目標を自分たちで立ててやりきった時に感じた幸せや自分らしさを、思い出す体験でした。 “誰かに連れていってもらうのでなく、チームメンバーとして私も自分の意志で一緒にそこに行ける”と感じ、就職を決めました。


大屋:皆さん、ビジョンを信じて、一丸で取り組んでいてとても魅力的な組織ですね!

大屋:最後に、CAVINの未来の展望について、一言お願いします。

Roy:今の日本では特別な日に贈るものという印象が強い花。ですが、なんでもない日を特別にすることもできると思っています。社会は便利になっても、心は簡単には便利にならない。
そのように常々思っています。
先人たちの叡智に倣いながら、今の時代だからこそできる変革の旗振り役となる。
そのような経営ができれば、一経営者としても、一人の人間としても幸いです。
テーマは「最先端のクラシック。」
いつかの当たり前を今創れるように、チーム一同邁進していきたいと思います。

大屋:小松さん、阿部さん 今日はありがとうございました!

大屋 誠

大屋 誠

クラウドサービス開発や新規事業のR&Dを経て、現在はヤフーにてデータ コンサルティング事業に従事。 事業開発や国内外の技術評価の経験を活かし、アシタネプロジェクトに参画。技術やサービスのキュレーションや、人材教育支援のプログラム開発に従事。東京から福岡に生活拠点を移し、週末は養鶏や農業など楽しむ。