technology 水生植物「真菰」による水質浄化〜株式会社リバーヴ〜

真菰(まこも)はもしかしたら一般的に聴き慣れない名前かもしれない。真菰は、イネ科の多年生水生植物のことである。

出雲大社の本殿のしめ縄に使われているのが真菰というと、誰しもがイメージできるだろう。
伊勢神宮のしめ縄は麻で作られており、日本では古来から麻と真菰は対になる植物として親しまれてきた歴史がある。

真菰は優れた環境の浄化力が注目され、健康食品やお茶としても親しまれてきた。
宮城県で100年以上の歴史がある株式会社リバーヴ(以下、同社)では、健康食品などの販売を行いながら、真菰の植樹など環境改善活動も行っている。

水辺に生える真菰

真菰とマコモ、まこもたけ

実は、真菰とマコモ、まこもたけはそれぞれ意味合いが違う。
真菰は一般的な植物のことを挿し、「マコモ」は同社の健康食品である。

まこもたけは、真菰の茎が変化したもので、中華食材店やデパートなどでも販売するようになり、中華料理の食材として知名度も出てきている。
また、各地の村おこし・町おこしに利用されて、栽培され、秋口に販売する自治体なども増えてきている。

黒穂菌に寄生されてない原種は貴重になっているが、同社が植樹する真菰は、すべて原種である。

収穫されたまこもたけ

日本初のマコモ健康食品

日本初の真菰の健康食品「マコモ」を作ったのが同社だ。
宮城県のとある沼地で、猟師に撃たれ傷ついた水鳥が、真菰の草を啄んではキズにあて、数日後、元気に羽ばたいていったことを創業者が目撃、観察したのが、マコモが作られたきっかけとなった。

イネ科の多年生植物『真菰』を原料とし、乾燥・発酵・粉砕等の工程を経て、微粉末の製品に仕上げている。お茶代わりにマコモの粉を白湯・水などあるいは日本茶・コーヒーほかの液体に溶かして、老若男女を問わず、飲みやすくなっている。

同社の健康食品「マコモ」

縄文時代での真菰の使われ方

縄文時代、「真菰」は衣食住、すべてにわたって欠かせない存在だった。
まだ、イネあるいは稲作文化が伝わる前のこと。
「真菰」の実や新芽などは食料となり、干した真菰は、ゴザのように、あるいは枕にもなり、蓑笠など様々な生活用品として利用されていた。

萱ぶき屋根には、実際は萱だけでなく、葦や真菰も使われてきたし、ワラ即ち、イネが我が国に入る前は、このように真菰を乾燥したものがいろいろな場面で使われ、生きていく上で必要不可欠な存在となっていた。

その名残なのか、今でも伝統を重んじ、歴史を尊ぶ行事などに真菰は使われ、その後の時代の変遷とともに、手軽にワラが入手できるようになり、逆に真菰が簡単に入手できなくなっても、真菰の位置は揺るがないまま、現代に至っている。

衣食住に密接な関わりのあった真菰

環境浄化に役立つ真菰

第二次大戦後、日本の経済発展にともなう開発により、真菰の群生に適した湖沼が、道路工事や住宅建設のために埋め立てられたり、河川がコンクリートの護岸工事により、残念ながら真菰をはじめとする水草、葦(あし)、ガマなどの生育環境が奪われ、どんどん駆逐されてきた。

1970年代までは、各地に残っていた真菰で編んだ馬や精霊船などを作る風習も、どんどん廃れていってしまった。

つまり、一時的に「真菰」は雑草として、人々に忘れられかけた存在、見捨てられたような状態になっていたのだ。

その後、90年代後半から真菰などの植物が湖沼などの水質浄化に役立つことが分かり、種々、環境対策として実験的に植栽されるようになってきている。

同社では、真菰の植樹を精力的に行い、環境浄化に役立てている。
水辺に生えるマコモは、河川湖沼の窒素やリンを消費し、水質の富栄養化の改善に役立つ。

一般的には、水質浄化に使われる植物は、 テイアオイのような浮標植物,、アシ・ガマなどのような抽水植物が多い。
しかし、これらは人間の予想を超えた繁茂をしてしまうこともあり、見た目にも良いとは言えない。

それに対し、真菰は一気に増えすぎてしまうということはない。
また、 真菰はハクチョウ類など水禽類の採餌植物 として重要な役割を持っている。
真菰は 9月から10月頃までは葉や幹などの上部栄養器官の生長を続け、その後地下茎の栄養生長を促進させる。
そして冬季にこのように充実した地下茎がハクチョウ などの餌となる。
それらの点が評価され、 ラムサール条約登録地であ る伊豆沼 ・内 沼などで、植生復元に使われてきた実績もある。

戦後、川が護岸工事により真菰などの水生植物がいなくなったが、水生植物がいなくなるということは、それを住処や餌にする昆虫や鳥類、小動物も住めなくなるということだ。
真菰によって生態系を取り戻す同社の取り組みは非常に重要だ。

小野 誠(環境コンサルタント)

小野 誠(環境コンサルタント)

大手通信販売会社を経て、インターネットビジネスのベンチャー企業の立ち上げなどに携わる。息子が生まれたことにより次世代に残す地球環境への意識が高まり、微生物活性材「バクチャー」にジョインした。日本及び東南アジアの水質浄化、土壌改善などの経験をもとに環境コンサルタントとしてアシタネプロジェクトに参画。