technology 宮古島の美しい海を守りたい。サンゴからつくった「海のマイボトル」

●サンゴの役割と問題現在、世界各地でサンゴの「白化現象」が深刻な問題となっている。サンゴ自体は動物ですが、褐虫藻と呼ばれる藻類と共生関係にある。サンゴは、その褐虫藻が生み出す光合成生産物に依存して生きている。サンゴの白化は、環境の急激な変化によるストレスにより褐虫藻の光合成系が傷つき、褐虫藻を放出することにより起こってしまう。
このとき、サンゴの白い骨格が透けて白く見えることから「白化」と呼ばれている。環境が回復すれば褐虫藻が戻り健全な状態に戻る可能性もあるが、環境が回復せず白化が長く続くとサンゴは死滅してしまう。

白化したサンゴ

「海の熱帯林」、「海のオアシス」と呼ばれることもあるサンゴ礁。そんなサンゴ礁は自然界で大きな役割を担っている。サンゴを中心とした食物連鎖があることと、魚をはじめとする様々な生物の棲家であったり、産卵場所になっているためだ。海の健全な生態系を守るためには、欠かせない存在となっている。
また、サンゴは褐虫藻に光合成をしてもらい、それによって生まれたエネルギーを分けてもらって生きていることに触れたが、炭素固定に関しては一般的な樹木よりも高く、同一面積あたりで6~16倍もの量を固定できると言われている。

●白化現象の原因サンゴの白化が起きる原因として、様々な要因が絡まりあっており、水温の変化や強い光、紫外線、低い塩分などが考えられている。特に水温が高くなったことは良く触れられており、サンゴに適した水温は25℃から28℃といわれているが、水温が30℃を超える状態が長く続くようになったため、褐虫藻の異常から白化に到ると考えられている。エルニーニョなどの気候的な原因により短期的な海水温の上昇が引き起こされることも大きい要素の一つだ。

●白化現象以外のサンゴ死滅の原因白化現象以外にもサンゴを痛めてしまうことはある。二酸化炭素が海水に溶け込んで発生する海水酸性化だ。通常、海水はアルカリ性だが、海の水が酸性に傾くと、サンゴの石灰化が阻害され、成長することができなくなってしまう。また、沿岸開発や海洋汚染、森林の栄養の枯渇など、様々な要素がサンゴの死滅の原因となっている。

サンゴ養殖の様子

●サンゴからつくった海のマイボトル

そんなサンゴ礁を守るために、様々な団体や個人も活動を行っている。アサヒユウアス株式会社では、死滅したサンゴを使った「海のマイボトル」をリリースした。商品の売上1本につき100円をサンゴの保全と養殖に取り組む一般社団法人伊良部島環境協会(所在地 沖縄、理事長 黒岩強)へ寄付するとのことだ。

アサヒユウアスでは、これまでリユースカップ「森のタンブラー」やリキャップできるマイボトル「森のマイボトル」をはじめ、食べられる容器「もぐカップ」やカフェから出るコーヒーかすを活用した[Coffeeloopカップ」などの飲料容器を開発し、環境負荷低減に取り組んできた。今回は同社がこれまで培ってきた技術を用いて、死滅した養殖サンゴを20%使用したリキャップできるマイボトルを開発した。

※天然サンゴの使用は法令で禁止されており、海のマイボトルで使用するサンゴは、養殖活動で残念ながら育たなかったサンゴが使用されている。

サンゴ死滅の問題は、環境問題に関するニュースなどで目にすることはある。
しかし、どうしても遠い世界の話のように感じてしまっている人が多いように感じる。昨今の環境問題を見ていて感じることは、バタフライ・エフェクトの期間が短くなっているということだ。
例えば、以前であれば些細な問題として片付けられてしまっていたことが、現在ではあっという間に大きな問題になってしまっている気がする。これは、問題が表面化してしまった時には、手がつけられなくなっているケースも出てきているように感じる。そういった意味で、遠い世界に感じる問題をグッと身近に引き寄せるアプローチは必要なことだと考える。「海のマイボトル」を手にとる人が増え、サンゴ礁の問題の認知がより高まることを祈っている。

小野 誠(環境コンサルタント)

小野 誠(環境コンサルタント)

大手通信販売会社を経て、インターネットビジネスのベンチャー企業の立ち上げなどに携わる。息子が生まれたことにより次世代に残す地球環境への意識が高まり、微生物活性材「バクチャー」にジョインした。日本及び東南アジアの水質浄化、土壌改善などの経験をもとに環境コンサルタントとしてアシタネプロジェクトに参画。