ピリカストーリー
会社名にもなっているピリカは、端的に言うと「ゴミ拾いSNSアプリ」が始まりだ。
元々は京都大学大学院の研究室で生まれたサービスである。
きっかけは、代表の小嶌不二夫氏が休学して世界一周をしたときに、旅した全ての国や地域で深刻な脅威となっていたポイ捨てごみ問題だ。
「もし、ITを使って低コストで問題を解決する方法を開発できれば世界からポイ捨てごみを無くせるかもしれない」と、帰国した小嶌氏が友人と共に作り始めたサービスがごみ拾いSNS「ピリカ」の始まりである。
そして2011年5月、小嶌氏が友人のエンジニアを誘って開発し、「ピリカ」が公開された。
果たしてSNSやアプリでゴミを拾ってくれる人は現れるのか。
最初の1ヶ月で拾われたごみの数はたった100個。
しかし、それは大きな一歩だった。サービスを通じて会ったことも無い人がごみを拾ってくれるという大きなムーブメントは始まっていた。
2014年の初め、拾われたごみの数が300万個に届きかけた頃、ある疑問がメンバーの間に生まれた。
「ピリカによってポイ捨てごみは本当に減っているのか、効果があると言い切れるのか」
結論は「分からない」だった。
この世界にはポイ捨てごみの変化量や改善率を測る“ものさし“が存在しなかったためである。
「盲目的に良いと信じてピリカを続けることもできる、だけどもし効果が無ければ、どれだけやっても僕達の目標である環境問題の解決には繋がらない。他の誰かに証明されるくらいなら、自分達で“ものさし“を作って決めよう」
街中に落ちているゴミの量を同じ基準で計測し比較するにはどうしたら良いか?
ピリカは試行錯誤の末、歩きながらスマートフォンで道路の動画を撮影しデータを取得し、そのデータを機械学習や画像認識の技術でポイ捨てゴミを特定し、地図情報と合わせることでゴミの量がわかるようにヒートマップ化するアイデアを思いついた。
それまでのピリカSNSアプリにはなかった新しいシステムの開発に挑み、たくさんの仲間の力を借りて生まれたのが、広範囲のポイ捨てごみを鷹の目で見るように調査できる「タカノメ」だ。「タカノメ」は多くの自治体や企業、議員などにも採用されている。
データ収集は歩きながらのスマートフォン撮影が基本だが、ドローンを活用したごみのデータ収集・解析も行われている。
もうすぐピリカが創業されてから10年(2021年現在)、ピリカSNSを通して拾われたごみの数は1億7000万個を超えている。しかし、まだまだまだポイ捨てごみ問題を克服できていない。地球上のポイ捨てごみは毎年兆個単位で増え続け、問題の全容は分からないまま。何より、この世には人類が克服しなければならない未解決の環境問題が多く残っている。
しかし、人類はこれまでにも様々な危機を克服してきた。小さいことをコツコツと続けることは、やがて大きなうねりとなる。ピリカは「科学技術の力であらゆる環境問題を克服すること」の実現に向かい、日々邁進している。
ピリカの提供するサービス
ごみ拾いSNSアプリ「ピリカ」
ピリカは世界108ヶ国以上で利用されているごみ拾いボランティアSNS。
これまでに拾われたごみの数は1.7億個以上である。
ポイ捨て調査サービス「タカノメ」
「タカノメ」はスマホやドローンで「ポイ捨てごみ」や「歩きたばこ」の分布や深刻さを調査するサービス。同一基準で街中に存在するポイ捨てゴミの量の比較を可能にし、施策の効果測定や改善提案を通じて、きれいな街づくりに貢献している。
マイクロプラスチック調査「アルバトロス」
世界共通の環境課題として認識されつつある、マイクロプラスチックの海洋流出問題。特に直径5mm以下のマイクロプラスチックは回収が難しく、生態系や人体への影響が懸念されている。
しかし、マイクロプラスチックの流出メカニズムは未だ不明点が多く、有効な解決策は見つかっていない。ピリカは安価で効率的なマイクロプラスチック流出調査サービスを開発し、河川や港湾、下水処理施設など、様々な場所で調査と実態解明を進めている。
ごみ問題の解決について
現代の私達の生活は、ごみ問題と切っても切り離せない。
毎日何かを食べ、何かを着て、住むだけでごみを発生させてしまう。
産業革命以前では、包装なども自然に還りやすい素材からできていたが、現代の包装はプラスチックを中心としており、簡単には自然に還らない。それは、原料の石油がそのままの状態で地中にあることからも、その分解のされにくさは容易に想像できる。
そのため、包装はポイ捨てなどされることなく、適切に分別され、リサイクルに回される必要がある。
また、ごみ拾いをしていると良くわかるが、捨てられているごみの多くは、タバコの吸殻だ。タバコのフィルターは、プラスチックの粒子からできている。
これらも、川から海に行ってしまうと、マイクロプラスチックになってしまう。
自然界で汚れの分解は微生物が担っているが、微生物の分解できる範囲内の汚れであれば、汚染が進むことはない。しかし、微生物の分解の許容量を超えてしまった瞬間に、汚染は加速して行く。これが現在の地球である。
ごみ問題も同じで、捨てられる量よりも、回収して適切に処理される量が上回れば、地球にごみが溢れることはなくなる。
それを定量化し、見える化しようとしたことは、ピリカの画期的なポイントだ。
東南アジアなどを回っていると、ごみを分別するという意識がないことに気づくが、こういったアプリが世界に浸透していくことで、ごみを拾う・その前に分別をするということの重要性も意識されてくると考える。
自分の家や庭に落ちているごみは誰でも拾う。視点を広げると、地球も私達みんなの家だ。ピリカを世界中のより多くの人が活用して、地球からごみがなくなる日が来ることを信じている。
小野 誠(環境コンサルタント)
大手通信販売会社を経て、インターネットビジネスのベンチャー企業の立ち上げなどに携わる。息子が生まれたことにより次世代に残す地球環境への意識が高まり、微生物活性材「バクチャー」にジョインした。日本及び東南アジアの水質浄化、土壌改善などの経験をもとに環境コンサルタントとしてアシタネプロジェクトに参画。