technology 廃ガラスのリサイクル品で環境問題を解決〜鳥取再資源化研究所〜

日本で埋め立て処分されるガラスは、年間約400万トンとも言われている。

この廃棄物となったゴミを独自の特許技術で再資源化しているのが、鳥取にある株式会社鳥取再資源化研究所である。
鳥取県中部の1市4町から廃棄されたガラス瓶は、全て同社に回収され、多孔質ガラス発泡材「ポーラスα」に生まれ変わる。ガラス瓶を破砕し、カルシウムなどの発泡剤と混ぜ合わせ、高温で熱を加え焼いたものだ。ポーラス(多孔質)の名前の通り、多くの気泡を持つ。この素材が乾燥地農業をはじめとする幅広い分野に活用され、国内外で注目されている。
製造工程動画:https://youtu.be/-3U7mcZz2hc

創業は2001年。当初は廃ガラスを原料とする軽量盛土材や防犯砂利を生産・販売していたが、競合が多く、価格競争の波にのまれていった。代表の竹内義章氏は、独自性の高い製品を開発しようと、鳥取県に相談。これをきっかけに鳥取大学とガラス瓶の無害化発泡技術の共同研究が始まり、「ポーラスα」が誕生した。鳥取大学乾燥地研究センターとも連携し、その高い保水性から乾燥地農業での実用化に期待が高まる。

●同社の技術優位性

●独自技術による安全性の高さ
ポーラスαを利用した栽培後の土壌や作物中への悪影響もなく利用が可能だ。環境省が定める土壌環境基準や、CODEXやEUの環境保護規制をクリアしている。

●海外での取り組み
同社がポーラスαを用いてアフリカ諸国で実験を開始したのが2009年。当時、鳥取大学乾燥地研究センターにモーリタニア人留学生がおり、その留学生の繋がりから節水型野菜栽培の実証実験に着手した。まずモーリタニアで行った乾燥地におけるトマト・オクラ栽培の実証実験を皮切りに、その後ケニア、セネガル、モロッコと実証実験の場を拡大していった。
北アフリカのモロッコは、トマトの輸出高が世界第4位であるなど、農業が基幹産業の一つになっているが、その立地ゆえ水不足に悩まされている。気候変動による降水量の減少も見込まれていることから、農業拡大に向けて何らかの方法を模索していた。 ポーラスαを土壌改良に混ぜるだけで、ポーラスα内の空隙が土壌中の水分を保持し、土の保水力を向上させてくれる。実証事業開始1年目で早くも結果が出た。試験栽培で灌水量を50%カットして行ったところ、トマトの収穫量が28%増、インゲンは22%増と収量が想定以上に良好だった。市場性を見込み、2017年5月にモロッコ現地法人「「Tottori Resource Recycling Morocco S.A.R.L」を設立」し、すでに約50件の農園にポーラスαを導入している

他にも南アフリカやドバイ、ペルーなど計20か国の農家に利用され、国連機関IOMソマリアの避難民キャンプや、WFPエスワティニの乾燥地農業プロジェクト、大手企業のCSR事業にも利用されている。 国連の工業部門であるUNIDOのSTePPデータベースにも登録されている。UNIDO  <Water-Saving Porous Alpha Technology Increases Crops>
http://www.unido.or.jp/en/technology_db/1659/

●社会課題の解決へ同社が取り組む社会課題の解決の一つが、太陽光パネルガラスの安心・安全なリサイクル技術だ。アンチモンなどの有害物質を含む太陽光パネルガラスはリサイクルが難しいとされている。同社ではこの問題に取り組み「無害化リサイクル技術」を開発(国際特許)し、 ポーラスαへのリサイクルを可能としている。 また、ポーラスαは太陽光発電設備の防草材として、活用することも可能で、導入が進む太陽光発電設備のサーキュラーシステムが実現する。

他にもポーラスαは、畜産工場や食品工場などからの悪臭や排水処理、微生物発電などにも利用が可能で、ポーラスαが今後の社会課題に与えるインパクトは非常に大きいと考えている。

小野 誠(環境コンサルタント)

小野 誠(環境コンサルタント)

大手通信販売会社を経て、インターネットビジネスのベンチャー企業の立ち上げなどに携わる。息子が生まれたことにより次世代に残す地球環境への意識が高まり、微生物活性材「バクチャー」にジョインした。日本及び東南アジアの水質浄化、土壌改善などの経験をもとに環境コンサルタントとしてアシタネプロジェクトに参画。