technology 竹を財産に変える竹紙製品             〜協業組合ユニカラー〜

●過去は資源だった竹
竹は生活に役立つ資材・資源として、古くから日本人の生活を支えてくれたものの一つだ。縄文時代の遺跡からも竹を素材としていた加工品が出土したという記録もある。竹は生命力に溢れ、1日に120cm程度伸びたという記録もあるほど。加工がしやすい竹は、日用品だけでなく、建築資材としてもたくさん使用されてきた。
しかし、高度経済成長期になると、プラスチックやコンクリートなどが登場し、竹の出番はなくなってしまった。使われなくなった竹は放置されるようになり、管理不足の竹林はその生命力が暴走し、周囲の森林や里山を侵食するようになってしまった。

京都の風景を見ると、竹林の風情ある写真などを目にすることもある。しかしこれは、手入れが行き届いてこそ景観を保つことができているのだ。少子高齢化の進む地方で、成長の早い竹をただ管理するというのは現実的に難しい問題がある。

●竹の管理について
竹は繁殖力が強いため、放っておくと面積が広がる上に背が高くなり、他の木々や草木に太陽光が届きにくくなってしまう。

その結果、森林や里山の植物は竹に負けて、どんどん竹林が広がっていくのだ。竹は根が浅いため、竹林が広がると山の保水力は急激に失われる。また、地下の岩盤に根付くこともないため、豪雨などの際には地滑りが起きる確率も高くなってしまう。そして広葉樹がなくなってしまうと、落ち葉が腐食層となり、川から海に植物ミネラルを供給してくれており、それらが川や海の生態系を支える重要な栄養となるだが、現在それが急速に失われてきている。

かつては、適度にタケノコを採ったり、竹を資材として使う際に伐採が行われ、適度な竹林が保たれてきた。現在では、タケノコを採取することも減り、資材として使われなくなった竹を伐採することはただの重労働であり、だんだんと放置されてきた経緯がある。

●協業組合ユニカラーの挑戦
鹿児島県の竹林面積は、日本一と言われている 鹿児島県の印刷業者が集まって設立された協業組合ユニカラーでは、その鹿児島県の竹林の状況を目の当たりにしてきた。

かつては資源として使われてきた竹は、目の前にある。わざわざ資源を輸入しなくても、竹を活用することはできないかと考えた。そして、脱プラスチックが叫ばれる中、プラスチックやパルプに変わる資源として竹を活用することに取り組み始め、長い試行錯誤の末、 2019年には竹紙ストローを開発した

鹿児島産竹紙100%の紙コップ誕生

そして、ついに鹿児島産間伐竹材100%使用の紙コップが生まれた。通常、紙の多くは、遠く海外産のパルプを輸入して作られている。わざわざ海外の資源を輸送コストをかけて輸入することは環境負荷が高くなってしまう。それを竹を使って国産に切り替えることには大きなメリットがある。

また、紙コップの内側にはプラスチックフィルムでコーティングしているものもある。よく紙コップで熱いコーヒーを飲むとマイクロプラスチックを摂取してしまう可能性があると言われるのはこれが原因だ。

竹紙コップでは耐水性の試験でも従来の紙コップより優れながらも、プラスチックフィルムは使用していない。環境にも身体にも優しい竹紙コップだ。世界的な環境への取り組みを考える中でも、竹は様々な分野で優れた資源になる可能性を秘めている。

小野 誠(環境コンサルタント)

小野 誠(環境コンサルタント)

大手通信販売会社を経て、インターネットビジネスのベンチャー企業の立ち上げなどに携わる。息子が生まれたことにより次世代に残す地球環境への意識が高まり、微生物活性材「バクチャー」にジョインした。日本及び東南アジアの水質浄化、土壌改善などの経験をもとに環境コンサルタントとしてアシタネプロジェクトに参画。